年金って払うべきだろうけど、払い損になるのは嫌だという人へ
国民年金の料金って結構負担になる。
ちなみに2018年現在では月額16,490円。
少ない収入の中から捻出するには、ちょっと躊躇してしまう金額です。
そのうえ年金制度に対する不安もあるから、どちらかというと「払い損になる」という色々な噂話を耳にする。
「今の若者は払っただけの見返りがない」
「強制徴収になっても2年で時効になるから逃げろ」
「年金制度自体が崩壊しているから払う必要がない」
働き方の選択肢が色々ある世の中だから、一度正確な知識をインプットしておいた方がいいです。
フリーターや派遣社員の人はちょっと時間を取って考えてみましょう。
国民年金の損得シュミレーション
保険料負担額 | 年金受給額 | 倍率 | |
---|---|---|---|
1940年生まれ | 300万円 |
1,300万円 |
4.5 |
1950年生まれ | 500万円 |
1,400万円 |
2.7 |
1960年生まれ | 900万円 |
1,700万円 |
1.9 |
1970年生まれ | 1,300万円 |
2,100万円 |
1.6 |
1980年生まれ | 1,800万円 |
2,700万円 |
1.5 |
1990年生まれ | 2,300万円 |
3,500万円 |
1.5 |
2000年生まれ | 3,000万円 |
4,600万円 |
1.5 |
2010年生まれ | 3,900万円 |
5,800万円 |
1.5 |
※上記データは平成21年に発表された「公的年金の世代間格差の財政検証」よりデータを抜粋したものです。
世代間格差は凄まじいものがあります。
ただ生まれた年代を恨んでもどうする事も出来ないので、現在老齢年金を貰っている人のデータは無視。
それよりも注目すべきは、どの世代でも【保険料負担額<年金受給額】となっていること。
なぜ、そうなるか?
それは、国民年金の保険料負担者が本人だけでなく+国庫まで含まれているから。
現在の国庫負担率は1/2で、ありとあらゆる税金(所得税・固定資産税・印税など)が国民年金に流れ込んで制度を維持しているという仕組みを知っておくといいでしょう。
つまり「今の若者は払っただけの見返りがない」という認識は間違えているのです。
ちなみに国庫金から厚生年金へは一円たりとも支出されていません。
これはどういうことかというと、立派な企業にお勤めしている人達が、フリーターや自営業者が将来受け取る国民年金の一部を負担しているという事です。
督促状が届いたら逃げ切れない
国民年金未納者が恐れているレター。
それは年金事務局から届く督促状。
「国民年金は2年間逃げ切ればセーフ」という悪知恵を聞いた事がある人も少なくないでしょう。
これは半分正解で、半分は不正解。
まず「2年間逃げ切る」というのは「国による社会保険料の徴収権が2年で時効になる」事を差している。
つまり3年前の国民年金未払いは既に時効という事。
ただし、世の中そんなに甘くはなく、督促状が送付されると時効は延期となり、督促状送付時期からまた2年後が時効対象日となる。
強制徴収→財産差し押さえとなる年収目安は300万円
マイナンバー制度が始まる前までは、強制徴収するまでに事前調査の手間暇がかかっていたので、実質的には年収400万円以上なのに未納状態が13カ月以上続いている人だけが対象でした。
ところが2016年から開始されたマイナンバー制度によって、未納者摘発の手続き&取り立てを簡単にできるようになり、状況が一変しました。
住所氏名だけでなく、勤務先(バイト先含む)・収入・税金・健康保険・年金・銀行口座など、全ての個人情報が紐づけられているマイナンバー制度は恐ろしい。
この制度が導入されたことで、国民年金未納者をリストアップして、簡単に銀行口座を凍結する事ができるようになったし、勤務先(バイト先)から給与支払い前に強制徴収する事もできるようになったのです。
なぜなら雇用主は報酬を支払う人のマイナンバーを税務署に提出する義務を負わされているから。
個人のお金の流れが政府に丸見えとなった現在、ほぼ逃げ切る手段はありません。
国民年金保険料の滞納対策も年々厳しくなっています。
- 2015年・・・年収400万以上&滞納13カ月以上
- 2016年・・・年収300万以上&滞納13カ月以上、年収350万以上&滞納7カ月以上
- 2018年・・・年収300万以上&滞納7カ月以上
ちなみに強制徴収対象者となった場合は、未納分の年金保険料+延滞料を課せられる。
逃げたり無視するより、話し合えば最終的に自分が得をする
年金保険料を真面目に支払ったら、生活が成り立たないという人もいるだろう。
そういう人向けの救済措置があって、保険料免除・納付猶予制度を利用すると良いでしょう。
申請して納付免除となった場合、国民年金加入期間として認められる。
そのうえ、1円たりとも年金を払わなかったとしても、年金受給年齢に達すれば通常の半分の支給額を受取ることが出来る制度です。
そしてこの加入期間というのはかなり大事。
何故ならば、国民年金制度は25年間の加入実績(※1)がないと受給権利が発生しないから。
だから払えない経済状態に陥ったら、免除申請をして細く長く続けるのがコツです。
ちなみに満額支給(2015年現在だと年間78万100円)の条件は40年間の加入実績を有している事。
そして、後々経済的に余裕が出来れば、10年分5年分(2015年10月1日~変更)を遡って追納(後払い)する権利を得る事ができます。
遡って追納をするかどうかは選択できます。
追納しなければ、年金受給時に他の人より少ない給付。
追納すれば、満額支給の人と同額貰える。
あと、国民年金は老後の生活資金(老齢年金)という目的だけではない。
65歳になる前であっても、障害で働けなくなった場合には障害年金を貰える。
また結婚している人であれば、自分が死んだ後に家族に遺族年金が支払われるという生命保険的な機能もある。
(※1)25年間の加入実績について
老齢基礎年金を受けとる権利が発生する条件には、国民年金保険料を25年間払った(もしくは免除申請した)という加入実績が必要。
払ったり払わなかったりで65歳に達した時の加入実績が24年間だった場合は、1円たりとも老齢基礎年金を受け取ることは出来ない。つまりココだけの話であるが、
①現在の年齢が既に40歳を超えている
②まだ一度も国民年金を払った事がない
この2つの条件に当てはまる人は、今更国民年金に加入するメリットは皆無。
もし今後、金銭的に余裕が出来たら老後に備えて個人で貯蓄に励む方がマシでしょう。ただ、ご存じのとおり年金加入は国民の義務なので、国家権力を振るわれてしまえば、無理ゲーだと分かっていても強制参加させられる日が来るかもしれないという覚悟をしておいた方が良い。
【追記.2016年11月】
無年金者救済対策として、加入実績を25年から10年へと短縮する方向で国会審議が続いています。
まとまれば2017年10月から制度変更となる予定。
そして徴収強化へと舵を切っている。
「年金保険料を払わない」という選択肢は徐々に狭められている。
もの凄くリターン率の高い付加年金を知らないと損をする
最後は、お得な付加年金の話。
この制度は、国民年金に追加して毎月400円の付加年金を払うと、65歳以降に200円×加入月分の年金を一生涯貰える制度。
例:20歳~60歳まで付加年金を納付して、86歳(女性平均寿命)まで生きた場合
【総支払額】
400円×480ヶ月(40年)=192,000円【総受給額】
200円×480ヶ月(40年)×21年(86歳-65歳)=2,016,000円【損得】
2,016,000円(受給額)ー192,000円(支払額)=1,824,000円
上記計算例を見ていただければ、もの凄くリターン率の良い仕組みである事がお分かりいただけるでしょう。
この制度のポイントは4点。
- 国民年金加入者が対象
- 現役時代の支払額は月400円のみ
- 年金を貰い始めると、2年で支払い総額を超える
- その後も一生涯給付が続く
この制度はサラリーマンは加入できないので、フリーターや派遣・自営業者のみに与えられた特権と言えるでしょう。
こんなにリターン率の良い金融商品は、民間ではあり得ません。
国庫からお金が出ているからこそ実現できる仕組みで、その原資はもちろん税金。
国民全員から色々な名目で徴収されている税金の一部が、付加年金として還付されているのです。
だから、加入資格がある人は利用した方が得なのです。
でも、出来る事ならば、社会保険制度が整っている正社員になったほうが将来は安定します。
正社員を目指す意思がある限り、ニートやフリーターでも就活支援してくれるジェイックやハタラクティブもあります。
若いうちに挑戦しておいたほうがいいでしょう。